『銀河鉄道の夜』よりー悲
イラスト書道>2020年 古代文字×名作文学展
使われている文字:悲 元になった書籍「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治 著)
「悲」という字は、張り裂けそうな痛みを抱えてる胸から来ているそうです。そう見てみてたら、上の部分が肋骨に見えてきて。肋骨が手のひらに見えてきて、張り裂けそうなものを、肋骨でそっと包んでるみたいだなぁと思いました。 カムパネルラの、「おっかさんはぼくをゆるしてくださるだろうか。」という言葉で、父を思い出しました。生前父は、「親よりも早く死ぬなんて、親不孝はしない」とよく言っていました。有言実行の父だったので、そうなんだろうなと思っていました。しかし、そんな父の願いは叶わず、予想以上にずっと早く、祖母よりも早く、亡くなってしまいました。父が亡くなったあと、「悲」という字を書きたくて仕方がない夜がありました。張り裂けそうな胸の痛みが、今ならわかると思ったのです。悲しくても、悲しくても、普通に振る舞わなくてはいけないことはたくさんあります。この世の中で、どれだけの人が、この痛みをそっと胸に抱え込んでいるのだろうと思って書いた字です。この字は、最初の衝撃的な悲しみです。でも、きっといろんな悲しみがあると思います。しみじみとした悲しみ、ふとした悲しみ。それをそっと包み込む字が書きたいと思います。